すがやみつるのデジタルマンガことはじめ(7)
FAXがスキャナーになった!

パソコンからダイレクトにFAXを送れる?

 前回に紹介したアメコミを描くソフト「Comic Works」のパッケージが出てきたので、ちらりとお見せしておきます。「絵が描けない人でも、あらかじめ用意されているキャラクターを使ってマンガが描ける」というコンセプトは、コミPo!と同じですね。キャラクターや背景のビジュアルデータ作りには、「Shatter」のMichael Saenzが参加しています。



 さて、今回は、マンガのデジタル化を進める過程で試したファクシミリのスキャナー化について、紹介させていただきます。

 私にとって「マンガのデジタル化」は、「パソコンを使ってマンガを描く」のと同等に、「マンガをパソコン通信などのネットワークで送る」ことも大きなテーマでしたので、こんな話題も多くなります。ご容赦ください。

 パソコン通信をはじめたのは1985年4月ですが、当初は音響カプラーを使ってパソコンを電話回線に接続していました。音響カプラーの機種はエプソンのCP-20(写真右)。49,800円でした。通信速度は300Baud(ボー)。300bpsとは厳密には違いますが、ここでは詳しくは触れませんが、画面に表示される文字を目で追えるほどに遅いスピードでした(ボー〈Wikipedia〉)。

 私は、最初、アメリカのThe Source(ザ・ソース)という商用パソコン通信サービスの会員になってネットをはじめ、さらにCompuServe(コンピュサーブ)という当時世界最大の会員数(約30万人)を誇るパソコン通信サービスにも加入します。

 ほぼ同時に、国内でパソコン通信サービスをはじめたアスキーネットにも加入し、ネット三昧の日々を送るようになります。

 いずれも音響カプラーで接続していましたが、すぐにアスキーネットの会員有志で、2400bpsのモデムを共同購入しようという話が持ち上がり、私も一口乗ることにしました。当時、モデムという電話回線にパソコンを直結的に接続できる装置は、Dialog(ダイアログ=ロッキード社が開発した世界最大のオンラインデータベース)に接続する大手企業などが使うもので、1台が数十万円。個人では手が出るものではありませんでした。

 そんな高速のモデムが、共同購入によって台数を揃えることで、10万円以下で買えるというのです。確か7万円くらいだったと思いますが、喜んで一口乗るこちにしました。

 こうして2400bpsのモデムは入手できたものの、我が家では、その高速機能を活かすことができませんでした。私の家は練馬区の西端に位置していますが、近くの埼玉県和光市に在日米軍のラジオ局FEN(Far East Network。現AFN=American Forces Network)の送信所があって、その810KHzの電波が強力で、電話線に乗ってしまうのです。

「電話線に乗る」とはどんな状態かといいますと、モデムのスピーカーから英語のラジオ放送が聞こえてきてしまうのです。クルマで近所を走行中、カーラジオを交通情報の1620KHzに合わせていると、周波数が1/2(810KHz)のFENがスピーカーから聞こえてくるほど強い電波でした。トランジスタラジオの電池が切れても、FENだけは聞こえるほどだったのです。

 おかげでパソコン通信をしていても、FENの音声がノイズになってエラーが続出。せっかく2400bpsのモデムを買ったのに、実質的には300bps程度でしか通信ができませんでした。このモデムにはMNPというエラー訂正機能がなかったため、1200bps、2400bpsで通信すると、パソコンの画面に意味不明の文字や記号が並ぶばかりでした。

 その後、MNPのエラー訂正機能がついたモデムも買いましたが、似たような状況が使いました。

 その頃のパソコン通信の大きな目的のひとつは、パソコン通信ネット「ニフティサーブ」で管理人をしていたオートレーシング・フォーラムに、レースの速報を送ることにありました。富士スピードウェイや鈴鹿サーキットに行き、レース結果やレポートを現地からパソコン通信で送り届けるというものです。当初は音響カプラーを持参していましたが、アメリカでポケットサイズのモデムが売られていることを知り、個人輸入してみました。

 この前に共同購入したモデムもそうですが、当時の郵政省の認可は受けていない機種でした。郵政省の認可がないモデムなどの機器は、本来、電話線につなぐことができません。しかし、認可を受けた機種はバカ高くて、個人では買えませんでした。アメリカ製のモデムはアメリカのFCC(Federal Communication Commission=米国連邦通信委員会)の認可を受けており、業者が輸入するようになれば日本でも認可が得られるはずと見込んでの使用でしたが、すぐに普及しはじめた国産モデムを購入すれば、後ろめたい思いをせずに通信ができるようになりました。

 ポケットサイズのモデムは日本では未認可でしたので、おおっぴらには使えませんでしたが、富士スピードウェイや鈴鹿サーキットに出かけたときは重宝しました。

 9Vの006P積層電池で動き、最大通信速度は2400bps。それより低速の300bps、1200bpsでも使えました。アメリカのCompuServeは、600bpsの通信速度だと接続料金が安くなるので、チャットでは300bpsをよく使ったものです。

 このポケットモデムの特筆すべき点は、パソコン通信用のモデム機能を持つだけでなく、FAXモデムの機能も持っていたことでした。このFAXモデムをプリンターとして設定すれば、ノートパソコンのワープロで書いた文章や、お絵描きソフトで描いた画像を、印刷するのと同じ要領で、指定した電話番号のファクシミリに送信できるのです。つまり、ワープロで書いた文章なら、プリントアウトしたものをFAXマシンで読み取らせて送信するよりも、速くきれいに送信できるのです。紙に印字したものをスキャンすることなく、デジタルデータをダイレクトに送信できるからです。

 Macで描いたイラストも、同じ方法で、出版社に「きれいな状態」で送れるようになりました。

 もちろん小躍りして喜んだのは、言うまでもありません。

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