すがやみつる流デジタルマンガの描き方(2)

 私がパソコンを使ってマンガを描きはじめたのは、1985年からになります。デジタルマンガ家としてのスタートは早かったのですが、フルデジタルになったのは2018年になってからでした。それまでも板タブは使っていましたし、また液晶タブレットも試していましたが、使い心地が今ひとつシックリきませんでした。ところが、2018年にアップルから発表になったアップルペンシルを試してみたら、この描き味が実に心地よく、ペーパーライクのフィルターを貼れば、『ゲームセンターあらし』のような太い線を引くのも問題ないように思えました。

 そこでiPad Proとアップルペンシルを購入し、「コロコロアニキ」から依頼された新作『ゲームセンターあらし』を描くことにしました。左の画像は、初めてiPad Proとアップルペンシル、そしてクリップスタジオの組み合わせで描いたトビラ絵です。

 この段階では、シナリオがOKになると、シナリオのセリフ部分だけを抽出してテキストファイルにまとめ、これをDTPソフトのInDesignに流し込みながら、コマ割りをしていました。

 実は、マンガのネームは2000年くらいから、InDesignの前身であるPageMakerというDTPソフトで作成していました。1本のテキストファイルにまとめておいたネームを、画面に流し込みながらレイアウトができたからです。

 先にシナリオを書き上げるようになったのは、マンガ家をしながらマンガ原作者をしていた経験が大きいかもしれません。自分のマンガでも、原作者と作画家のパートに分けて仕事をするクセがついているのです。

 ストーリーはストーリー、演出は演出と、仕事のパートを区別し、それぞれの作業に専念したほうが、結局は、仕事を手際よく進めることができます。

「ネームができない」「ネームが進まない」というマンガ家や志望者の嘆きの声をよく聞きますが、ストーリーの完成を待たずにコマ割りをはじめているのが原因です。長年にわたってマンガを描いていれば、シナリオなど書かずとも、ストーリーを作りながらネームを仕上げることもできるでしょう。それでもプロットくらいは完成させてからネームに取りかかるほうが、安定した作品発表ができるはずです。

 以下に、私が書いた『ゲームセンターあらし』のシナリオとネームのPDFを掲載しました。ネームの方は、見開き表示で見てください。企画書やプロットはありません。

「コロコロアニキ」2019年冬号掲載『ゲームセンターあらし』

 担当編集者が初めて組む人だったので、まず、読者層などを考慮した企画の狙いとプロットを含む企画書を提出しようと考えていたのですが、プロットを書くつもりがシナリオになってしまったので、最初からシナリオを提出してしまいました。

 編集者にシナリオを読んでもらったうえで意見やアドバイスをもらい、シナリオに修正を加えたうえでネームに取りかかりました。

 このシナリオとネームを元に執筆した「コロコロアニキ」掲載の『ゲームセンターあらし』は、2019年秋に『ゲームセンターあらし 炎のベストセレクション』に収録されています。よければ、お買い上げになって、シナリオ、ネームと比較してみてください。

 下の動画は、昨年末に描いた「コロコロアニキ」2021年冬号掲載の、『ゲームセンターあらし』第3話カラートビラのペン入れの様子です。

 デジタルマンガについては、歴史なども含め、これからもいろいろ紹介させていただく様子です。興味のある方は、お楽しみに。

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